藤野院長は入り口で一瞬立ち止まった。
高橋唯はそれに気づき、何か聞こうとしたが、藤野院長はまるで何でもないかのように中に入っていった。
竹の間は広く、琴棋書画のコーナーもあれば、テーブルゲームを楽しむスペースもあった。
渡辺颯は彼らが入ってくるのを目の端で確認すると、お茶を置いて立ち上がり、白川華怜に向かって小声で言った。「華怜ちゃん、母が紹介したいお年寄りの方が来られたよ。」
白川華怜は少し首を傾げ、礼儀正しく渡辺颯と一緒に立ち上がった。
高橋唯は藤野院長を連れて屏風の向こうへ進んだ。彼女は体にフィットした旗袍を着こなし、独特な雰囲気を醸し出していた。黒玉の扇子を優雅に手に持っていた。
林おじさんは藤野院長の後ろについて、主席の椅子を引いた。
高橋唯は藤野院長に白川華怜を紹介する際、軽く身を傾けながら「藤野お爺さん、こちらが先ほどお話した若い方です」と言った。