223白川華怜は一体誰なのか?

藤野院長は入り口で一瞬立ち止まった。

高橋唯はそれに気づき、何か聞こうとしたが、藤野院長はまるで何でもないかのように中に入っていった。

竹の間は広く、琴棋書画のコーナーもあれば、テーブルゲームを楽しむスペースもあった。

渡辺颯は彼らが入ってくるのを目の端で確認すると、お茶を置いて立ち上がり、白川華怜に向かって小声で言った。「華怜ちゃん、母が紹介したいお年寄りの方が来られたよ。」

白川華怜は少し首を傾げ、礼儀正しく渡辺颯と一緒に立ち上がった。

高橋唯は藤野院長を連れて屏風の向こうへ進んだ。彼女は体にフィットした旗袍を着こなし、独特な雰囲気を醸し出していた。黒玉の扇子を優雅に手に持っていた。

林おじさんは藤野院長の後ろについて、主席の椅子を引いた。

高橋唯は藤野院長に白川華怜を紹介する際、軽く身を傾けながら「藤野お爺さん、こちらが先ほどお話した若い方です」と言った。

言い終わると、藤野院長がただ静かにその場に立ち、無表情で白川華怜を見つめているのに気づいた。

高橋唯は一瞬戸惑い、白川華怜の方を向いて「華怜、こちらが藤野院長よ」と言った。

白川華怜もまた黙したままだった。

これは……

相性が悪いのかしら?

高橋唯は扇子を握りしめ、思わず渡辺颯を見た。渡辺颯も状況が分からない様子だった。

木村浩は白川華怜の隣に静かに座り、悠然と自分にお茶を注ぎ、優雅でくつろいだ様子を見せていた。

個室の中には彼のお茶を注ぐ音だけが響いていた。

空気が冷え込んでいった。

高橋唯は藤野院長の無表情な顔を見ながら、自分が軽率すぎたのではないかと考え始めた。何か台無しにしてしまったようだ。

白川華怜は藤野院長のことを知らないのかもしれない。

彼女は扇子を置き、傍らの林おじさんが急いで藤野院長にお茶を注ぎ、雰囲気を和らげようとした。「白川さん、こちらは藤野さんで、お箏の大家でいらっしゃいます。」

そして藤野院長に向かって「藤野お爺さん、こちらは白川華怜さんで、渡辺家のお客様です」と言った。

林おじさんが言い終わると、藤野院長は冷たく椅子に座り、一瞥して言った。「彼女が白川華怜?では図書館で一生懸命勉強していた人は誰なのかね?」

木村浩はお茶を飲もうとした手を一瞬止めた。