白川華怜が江渡に来てからずっと、特に何もしていないようだった。
田中局長も姿を見せず、まだ陽城市にいるという。
彼らは陽城市の今の状況を知らないが、渡辺お婆さんと斉藤家の人々は白川華怜の後ろ盾が田中局長だと思っているので、田中局長が現れないため、彼女に対する畏怖の念は薄れ、ただ礼儀正しく接するだけになっていた。
渡辺助手の意図について、渡辺執事にもわからなかった。
しかし……
渡辺助手は渡辺泉と長い付き合いがあり、彼の言葉には必ず理由があるはずだ。渡辺執事は小声で言った:「お婆様、若様たちにはきっと何か考えがあるはずです。お気になさらないでください。」
「でも……」渡辺お婆さんはソファに呆然と座ったまま。
結局何も言わなかった。
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翌日。
白川華怜は江渡大学の門前に立ち、数歩離れたところで宮山小町が熱心に門を撮影していた。
周りには彼女と同じような人々がいた。
白川華怜は物憂げに手で頭上の太陽を遮った。
「よし」江渡に来たばかりの宮山小町は、早速江渡大学に来たがった。「行こう行こう、キャンパスの中に入ろう。」
そう言いながら、彼女は携帯を取り出して予約メッセージを探し始めた。
まだ見つける前に、白川華怜がすでにバリケードの向こう側に立っているのが見えた。彼女は学生証を手に持ち、ゆっくりと手のひらで叩きながら、漆黒の瞳で彼女を見つめ、まるで「何をぐずぐずしているの?」と言わんばかりだった。
宮山小町はカメラをしまい、彼女と一緒に中に入った。
「その学生証どこで手に入れたの?」彼女は白川華怜の手にある学生証を取ろうとした。「まだ入学前でしょう?たとえこの学校の人でも、まだカードは発行されていないはずじゃない?」
そう言いながら、学生証の名前を見た——
木村浩。
宮山小町:「……」
ああ、木村さんのだったんだ。
彼女は黙って学生証を白川華怜に返した。「はは……木村さんまだ卒業してないの?」
白川華怜は彼女を図書館に連れて行きながら、「知らない」と答えた。
宮山小町:「……」
何も言えず、ただ白川華怜の後ろについて歩きながら、江渡大学の様子を撮り続けた。「お昼は学食に行く?」
彼女は江渡大学についての動画を作るつもりだった。