白川家は彼女を族譜から除名した。
白川華怜は、彼らが長い伝統を持ち、宗族の観念が強いことを知っていた。しかし今は、どの族譜も華怜にとっては同じことだった。今は封建時代ではないのだから。
昔の族譜は、連座制のために使われていた。
「行きません」華怜は深く考えずに断った。「用事があれば私に直接言ってください」
夏休みとはいえ、華怜は相変わらず忙しく、音楽理論の勉強だけでも手一杯だった。
安藤秀秋は彼女の返事を予想していたので、意外には思わなかった。
彼は電話を切り、バルコニーのドアを開けて大広間に入り、鏑木執事に華怜の返事を伝えた。
「来ないのか?」鏑木執事は驚いて顔を上げたが、深く考えることもなく、さらに無関心に尋ねた。「もう一人は?」
もう一人は中村優香だった。
「彼女?たぶん途中だろう」中村優香について話すと、安藤秀秋の表情は冷ややかになった。
この反応に鏑木執事も驚かなかった。「ええ、彼女が到着したら望月当主に報告します」
望月当主が二人の若者の来訪を許可したのは、安藤秀秋が望月家でよい働きを見せ、彼を表に出す準備をしていたからだった。
正式に安藤秀秋を望月家の人々に紹介するためだ。
白川華怜が来るか来ないかは重要ではなかった。
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海山マンション。
白川華怜は宮山小町を部屋に案内した。
宮山小町は入るなり大広間のソファーに倒れ込んだ。ソファーは雪村真白が買ったもので、とても柔らかく、華怜のだらしない性格にぴったりだった。
彼女は木村翼のクッションに顔を埋めた。クッションからはかすかなミルクの香りがした。
「とりさんってなんでいつもミルク飲んでるの」宮山小町は顔を上げ、そのクッションを脇に置いて、シルクのクッションに持ち替えた。
視線は白川華怜に向けられた。
白川華怜は寝室の隣の小さな客室のドアを開けた。中にはグレーのシングルベッドが整えられていた。彼女は宮山小町にあごをしゃくって言った。「ここがあなたの部屋」
宮山小町はテーブルのリモコンに手を伸ばし、華怜に「OK」のジェスチャーを送った。
彼女はテレビをつけた。
画面が点くと、前回木村翼が見終わっていなかった江渡テレビのチャンネルで、『大永』の30話が放送されていた。