230 あなたの家のご主人様が出てきても無駄

電話の向こうの受付係は羽田彦名の声をすぐに聞き分け、胸が高鳴った。「今日は山田隊長が当番で、喧嘩の事件が一件だけあります。」

「山田義明?」山田隊長と聞いて、羽田彦名はすぐに誰のことかわかった。

山田義明は、彼が重用していた部下で、署内の幹部のほとんどが高く評価しており、今年警視に昇進させる予定だった。

順風満帆な道のりで、羽田彦名も彼を育成することを喜んでいた。

しかし、こんな日にミスを犯すとは思いもよらなかった。

羽田彦名は車を大通りに向けて走らせた。

通常の拘留なら、保釈金を払えば出られるはずで、普通なら何も問題は起きないはずだが、先ほどの石川校長の話を聞いて、羽田彦名は山田義明が今日は馬鹿なことをしでかしたと悟った!

拘留して、保釈の機会も与えない。

羽田彦名は受付係の説明を聞いて背筋が寒くなった。今回うまく処理できなければ、分署全体が上から下まで大きな人事異動になることを知っていた。

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分署。

山田義明は休憩室で、現場にいた二人の若旦那と話し合っていた。

紺色のシャツを着た男が足を組んで山田義明に供述を始めた。「私たちはただこの二人の学生に一杯飲もうと誘っただけです。彼女は飲まないだけでなく、私たちをこんな目に遭わせて……」

山田義明は頷きながら記録していった。「騒乱を起こし、公共の安全を脅かした……」

小山晶子は水を一杯持って留置室に向かった。

「小山くん」傍らの年配者は彼女の向かう方向を見て、あの女の子に会いに行くのだと察した。「山田隊長がまだいるから、あまり目立たないようにね。彼女が拘留されたのも、必ずしも悪いことじゃないよ。」

そうでなければ、あの若旦那たちの手に落ちたら、どんなことが起きるか分からない。

小山晶子はドアを開けて中に入った。

その女子学生はまだ椅子に座っていたが、以前ほど姿勢は正していなかった。椅子の背もたれに寄りかかり、まつげを垂れて、日向で日光浴をする小動物のように、全体的にリラックスした様子だった。

落ち着き払った様子。

まるで何が起きているのか全く理解していないかのようだった。

「お水を飲んでください。」小山晶子はティーカップをテーブルに置いた。

白川華怜は目を開け、テーブルの上の白い磁器のマグカップを見て、それを手に取った。「メッセージは全部送ってくれた?」