彼は白川華怜を見送った。
須藤も立ち上がり、車のキーを手に取って言った。「白川さん、どちらまでですか?お送りしましょう。」
「結構です」白川華怜は本を持ちながら、ゆっくりと答えた。「バスで行きますから。」
彼女はいつも境界線をはっきりさせていた。
白川華怜が去った後、鏑木執事は安藤秀秋を見て尋ねた。「小町?」
「華怜のクラスメートです。」安藤秀秋は宮山小町のことを話すと、笑みを浮かべた。
白川華怜のクラスメート?
鏑木執事は頷いたが、それ以上は聞かなかった。ただ安藤秀秋を見つめながら...彼も望月家の希望なのだろうと思った。
**
バス停で、白川華怜は下を向いて待ちながら、問題を解いていた。
また LINE が来た。今度は山田文雄からだった——
【全員に叱られた班員なんていない.jpg】
【毎日叱られない日はない.jpg】
【カビの生えたキノコ.jpg】
白川華怜は一目見ただけで、彼がまた叱られたのだと分かった。
白川博:【頭を使え】
彼女がチャットを閉じると、渡辺千月からのメッセージが表示された——
【rtbp,qw/】
【bvsmklopseudaodx】
【……】
スマートフォンの上で顔を転がしたかのような文字化けのような内容に、白川華怜は一瞬止まった——
【どこにいるの?】
今度は、相手からの返信は簡潔だった。
渡辺千月:【[位置情報]】
渡辺千月:【207号室】
白川華怜は場所を確認してみると、雲翔区の知名度の低いクラブだった。渡辺千月はクラブに行くような人ではないし、前回渡辺家を訪れた時の渡辺千月の服装も、彼女らしくなかった。
おそらく木村翼のことがあるから、白川華怜は渡辺千月にずっと友好的だった。
71番のバスが白川華怜の前に停まった。
白川華怜は顔を上げたが、乗らずにタクシーを拾った。
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雲翔区天国クラブ、207号室は会員専用ルームではなかった。
ドアがスタッフによって開けられた。
中は薄暗く、若い男女が集まって遊んでいた。
物音に気付いて、皆がドアの方を見ると、スタッフの後ろに立つ少女が目に入った。
その少女は白い普段着を着ていて、とても清楚な印象だった。黒髪は緩くまとめられ、化粧っ気のない優れた顔立ちが露わになっていた。