石川雄也は左手でマイクを持ち、右手で直接一連の番号を押した。
一度しか見ていなかったが、白川華怜の電話番号を覚えていて、わざわざ探す必要はなかった。
電話は数回鳴ったが、誰も出なかった。
隣で、文学科の院長が再び座り、冷めたお茶を手に取り、石川雄也から目を離さずに見つめていた。
電話は自動的に切れた。
白川華怜が図書館にいるなら、マナーモードで自動切断されるのは理解できるが、彼女は学校に来ると言っていたはずだ。石川雄也は受話器を機械に戻した。
少し変だった。
石川雄也は白川華怜がもうすぐ到着するだろうと推測し、しばらく待ってから顔を上げて文学科の院長を見た。「松山院長、白川華怜さんは富山のクラスを受験したいそうです。」
松山院長は髪が短く、そこに座っているだけで、優雅で時が静かに流れているような印象を与えた。
石川雄也の言葉を聞いて、お茶を置いてから「知っています」と答えた。
それ以上、松山院長は何も言わなかった。
石川雄也は白川華怜のクラス担任と話し合ったことがあり、白川華怜自身が非常に勉強熱心で、師を敬う優秀な学生だということを知っていた。二度の接触で石川雄也もそれを実感していた。
白川華怜と話すのは本当に心地よく、君子の風格があり、謙虚で自制心があった。
石川雄也は彼女が幼い頃から大文豪の影響を受けていたに違いないと感じた。このような教養は誰もが持っているわけではない。しかし、陽城市にいったいどんな隠遁の大文豪がいるのかも不思議に思った。
松山院長が白川華怜を探しているのは、石川雄也にとって意外ではなかった。
今年の満点作文は一篇だけで、松山院長もきっと誰が書いたか知っているはずだ。
残念なことに、この作文を書いたのは白川華怜だった。もし他の成績が普通の学生だったら、松山院長は必ず衆議を押し切って江渡大学文学科に入学させただろう。
石川雄也は白川華怜が気になり、再び手を伸ばして電話をかけた。今回は二回鳴った後、切られてしまった。
彼の穏やかな表情が消え、数秒間電話を見つめてから、リダイヤルを押した——
「お客様のお掛けになった電話は、電源が入っていないか…」
今度は完全に電源が切られていた。石川雄也は立ち上がり、受話器を置いた。
「どうしました?」松山院長は彼の表情が良くないのを見た。