石川雄也は左手でマイクを持ち、右手で直接一連の番号を押した。
一度しか見ていなかったが、白川華怜の電話番号を覚えていて、わざわざ探す必要はなかった。
電話は数回鳴ったが、誰も出なかった。
隣で、文学科の院長が再び座り、冷めたお茶を手に取り、石川雄也から目を離さずに見つめていた。
電話は自動的に切れた。
白川華怜が図書館にいるなら、マナーモードで自動切断されるのは理解できるが、彼女は学校に来ると言っていたはずだ。石川雄也は受話器を機械に戻した。
少し変だった。
石川雄也は白川華怜がもうすぐ到着するだろうと推測し、しばらく待ってから顔を上げて文学科の院長を見た。「松山院長、白川華怜さんは富山のクラスを受験したいそうです。」
松山院長は髪が短く、そこに座っているだけで、優雅で時が静かに流れているような印象を与えた。