寮の人たちは白川華怜の服を暫く眺めていた。
青葉紗矢は立ち上がって、「分かりました。明日また会長と詳細を相談します。服のことは後輩のお祖父さんに任せましょう。他に必要なものがあれば、後輩は遠慮なく言ってください。私たちはあなたの要望を全て叶えます」と言った。
白川華怜は出演を辞退するどころか、演目まで変更した。これは予想外の喜びだった。
青葉紗矢は今夜の訪問に大変満足し、帰ろうとした時に白川華怜の机の上の本を見て、「江渡大学の物理?これって来学期からじゃない?あ、そうか。後輩は富山のクラスだから違うのね」と言った。
昨夜、富山のクラスの名簿が流出した後、理論物理一組の学生たちだけが涙を流して嘆いていた。
青葉紗矢が帰った後、近藤希美は白川華怜の肩を叩いて、「長槍の調子はどう?」と尋ねた。
白川華怜は手元のスマートフォンを見下ろすと、まだ通話中だった。「まあまあかな」
彼女は椅子を元の位置に戻し、近藤希美に電話中であることを示してから、机に手をついて立ち上がり、バルコニーに出て、そこの小さなテーブルに寄りかかりながら、目を伏せて木村浩との会話を続けた。「さっきは先輩が来てたの」
電話の向こう側で、木村浩はスピーカーフォンにしていて、白川華怜が青葉紗矢たちと話している間、カーペットの上に座っている木村翼の手からルービックキューブをゆっくりと取り上げていた。
白川華怜の声を聞くと、彼は半分以上完成していたルービックキューブを適当に木村翼の手に押し込み、立ち上がってスマートフォンを手に取り、スピーカーフォンを解除した。「君たちの学部で新入生歓迎会があるの?」
「先輩が何度も私を探してきたの」バルコニーにはエアコンがなく、白川華怜は怠そうに足を伸ばした。
木村浩は尋ねた。「いつ?」
「月末。具体的な日にちは聞いてないけど」
「……」
302号室で、木村翼は手の中の半分以上完成したルービックキューブを見つめていた。
彼に背を向けている木村浩を見上げてから、まだ完全に完成していないルービックキューブを持ってカーペットから立ち上がり、302号室のドアを開けて階下へ向かった。
301号室のドアは開いていて、明石真治は木村翼について103号室まで行き、103号室のドアが閉まってから戻っていった。
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翌日。