256ちょうど彼女の最も得意なものを選んだ!木場院長と食事の約束_3

307号室が静かになり、全員の視線が玄関の外に向けられた。

教室のドアが開き、二人が入ってきた。先頭は眼鏡をかけた老人で、ゆったりとした服を着て、髪は少し乱れており、身なりには無頓着な様子だった。

彼が現れると、後ろの実験室で研究していた博士課程の学生たちを含む全員が、熱い眼差しで彼を見つめた。

上原文隆は木場院長の後ろについて、プロジェクターの電源を入れ、スライドを開いた。「木場院長、これをお使いください。」

彼はリモコンを木場院長に渡した。

「ありがとう」木場院長は軽く咳をし、教案も教科書も持たずに、ただ講壇の前に立った。「今日は教科書を持ってきていませんが、皆さん心配いりません。内容は全て把握しています。」

教室は非常に静かで、上原文隆を含む全員が木場院長の講義に耳を傾けていた。

白川華怜はトポロジーの教科書を一瞥し、主編者の名前がはっきりと印刷されているのを見た——

木場富山。

トポロジーの授業も8時から12時までで、休憩時間中でも富山のクラスの誰も休憩に行かなかった。

12時近くになり、木場富山は課題を出した。彼はスライドの問題を指さしながら、「これが皆さんへの宿題です。来週火曜日までに提出してください。」

上原文隆は最前列に座り、木場富山の臨時助手を務めていた。

時間がまだ30分残っていたが、木場院長は自分の携帯電話を持って早めに退室した。

後ろの最後列に座っていた博士課程の学生たちも立ち上がり、高橋謙治は自分のノートを持って追いかけた。「木場院長……」

富山のクラスの他の学生たちはまだ教室に残っていた。

上原文隆は最後の2列の学生たちも出て行ったのを見て、今年の富山のクラスの学生たちに言った。「今年は皆さん幸運です。木場院長が授業を担当されるからです。もちろん、皆さんも木場院長が課題を出されたことを知っていると思います。しっかり取り組んでください。チーム内での討論も可能です。これらは全て木場院長のトポロジーの平常点に含まれます。」

彼の言葉が終わると、富山のクラスの学生たちの討論の声が大きくなった。

「高橋隼、本当に木場院長だったんだ!君の兄さんの言った通りだね……」

「……」

他の学生たちもそれぞれの課題グループで活動を始め、誰もが同じように興奮していた。