木場院長は江渡大学に専用の休憩室を持っている。
物理棟からは少し距離があり、白川華怜はスクールバスに乗ってようやくここに到着した。
バスを降りると、バス停で待っていた金融学部の人々が目に入った。白川華怜は最近江渡大学で話題になっており、その容姿も控えめな雰囲気も非常に特徴的だった。
今日は彼女はシンプルな長袖Tシャツとブラックジーンズを着ていた。彼女の服には安藤宗次が刺繍を施すのを好んでいた。
今日のTシャツの左側には、シンプルで怠惰そうな黒猫が刺繍されていた。
ゆったりとした上着が彼女の痩せた体型を引き立て、ワイヤレスイヤホンをつけ、背筋をピンと伸ばした姿は、LINEを聞きたい人々を遠ざけるほどだった。
「あれが物理学部の白川華怜だ」金融学部の部長の白鳥寿明は隣の松木皆斗に向かって言った。「今年のミスキャンパスに選ばれただけのことはある。新入生歓迎会でも出し物があるって知ってる?」
松木皆斗はその遠ざかる姿を見つめ、ふと江渡音楽大学で白川華怜を見かけたことを思い出し、心が揺れた。「どんな出し物?」
「歌?」白鳥寿明は頭を掻きながら、「たぶんそうだと思うけど、まだはっきりとは分からない」
松木皆斗は我に返り、うなずいて、それ以上は聞かなかった。
二人が金融学部に戻ると、松木皆斗は白井沙耶香にこのことを話した。
白井沙耶香は先輩に尋ねてみた。
「あぁ、それね」電話の向こうで、金融学部の先輩は笑った。「最初は歌う予定だったんだけど、あなたとかぶっちゃったから、会長が曲を変えるように言ったの。えーと、今は...棒術に変更になったみたい。でも何に変えても、あなたには影響ないわ。むしろ、あなたのファンの多くが金融学部の新入生歓迎会を見に来るって言ってるわよ」
白井沙耶香の影響力は小さくなく、金融学部にとってもよい宣伝となっていた。
白川華怜に出し物を変更させたことについて、金融学部はまったく気にしていなかった。
それが彼らに何か影響を与えるとは思っていなかった。
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木場院長の休憩室は、大学の総合棟にあった。
この時間帯、ほとんどの教授は昼食に行っていた。
休憩室内では、黄原院長が木場院長と会議テーブルで話をしていた。白川華怜を見ても、黄原院長は驚かず、笑顔で挨拶した。「白川くん」