空沢康利は大野純也に友好的に挨拶し、伊田晴彦から本を受け取った。「これが君たちの言っていた本か...」
5冊、見覚えのあるエメラルドグリーンの表紙、白地に文字が書かれている——
『江渡大学物理学』
下に主編:木村浩。
空沢康利は見覚えのある名前を見た途端、言葉が途中で止まった。
空沢康利がその本を見つめているのを見て、伊田晴彦は彼がその本に興味を持っていると思い、思わず声を低くして言った。「この本のことは知ってるだろう?私たち学部生だけが見られるんだ。中の実験の多くは本院のものだよ。僕たちは高校3年生の時に国立集合学院で既に終わらせてる。君たちは頑張ってついていかないとね。」
「いや、この本の主編が...」
「シーッ」伊田晴彦は他の教授のことは饒舌に語るのに、明らかにこれには忌避感があった。彼は立ち上がって、「授業が始まるよ。君たちはまずこの物理の本に慣れておいて。」
空沢康利はその本を畑野景明と白川華怜に渡した。
白川華怜はその江渡大学物理の本を受け取って:「...」
少し離れたところで。
伊田晴彦は自分の席に戻り、隣の人が小声で尋ねた:「彼らはまだ物理を体系的に学んでないけど、私たちについていけるのかな?」
伊田晴彦はその言葉を聞いて、何も言わなかった。彼の視線は空沢康利の隣にいる男子学生に向けられた。その男子は長いコートを着て、前髪が長く、時々顔を上げると陰鬱な目が見えた。
まるで暗がりに潜むチーターのようだった。
伊田晴彦は視線を移し、今度は白川華怜に目を向けた。彼女は白いシャツを着ていて、袖は普通の服より少し広く、右手でゆっくりとキーボードを打っていて、赤いリボンがキーボードの上に垂れていた。
何を見ているのかわからない。
後ろを見ると、渡辺千月は最初から最後まであまり顔を上げなかった。この5人の中で、実験室に入ったことのある本田直哉だけが少しまともに見えた。
「わからないね。」
「わからないじゃ困るよ」隣の人が小声で言った。「これは私たちの成績にも関わることだよ。ロス夏期キャンプに行きたくないの?」
ロス夏期キャンプは大学生の聖地で、参加するには推薦状が最も重要だった。
物理学部からの推薦があり、普段の成績が高い人だけを推薦する。2週間ごとの研究グループも採点制だった。