254 包囲網を突破する(1)

吉田実里と近藤希美は明石真治に会ったことがなかったが、吉田実里は近藤希美よりも落ち着いていて、明石真治に「ありがとうございます」と礼を言った。

明石真治は二人に軽く頷いて実験棟へ向かった。彼が江渡大学に来たのはミルクティーを届けるだけでなく、木村浩のために書類も届けなければならなかったからだ。

ただし、先に白川華怜の代わりにルームメイトにミルクティーを届けた。

黒い車が走り去った。

近藤希美はようやく吉田実里に話しかける勇気が出た。彼女はビニール袋を握りしめながら「吉田さん、さっきの人、ドラマに出てくるヤクザみたいだったね」と言った。

明石真治は木村浩の側で長く過ごし、特別な訓練も受けており、実際に血を見たことがある。

その威圧感は明らかだった。

周りの大学生とは一線を画していた。

吉田実里は近藤希美の隣に立ち、その車が遠ざかっていくのを見つめ、ナンバープレートをしばらく見つめながら、何かを考えているようだった。

大講堂では二人を待つ仕事があった。

青葉紗矢は椅子を一つ運び出したところで二人を見かけ、「白川さんは二人にどんなミルクティーを持ってきてくれたの?」と尋ねた。

「白川」という言葉に、他の人々も思わず振り向いた。

「彼女の叔母さんが作ったの」近藤希美は笑いながらミルクティーを取り出した。何のロゴもない紙コップで、上部にシール、横には生分解性ストローが付いていた。

彼女は先ほどの見知らぬ男性のことを考えながら、ストローを差し込んで一口飲んだ。

特別な茶の香りがした。これは近藤希美が他のミルクティー店で飲んだことのない味だった。

近藤希美はすぐに白川華怜にメッセージを送り、このミルクティーがとても美味しいと伝えた。

「これは何?」野村清は申込用紙を手に取り、今日の仕事を終えて寮の仲間と食事に行く予定だったが、横のバッグに入っているポストカードに目が留まった。

「ミルクティーと一緒に入っていたの」吉田実里は二枚のポストカードを取り出し、ラベルのようなものだと思ったが、「白川さんの叔母さんが作ったミルクティーは本当に…」

言葉の途中で、彼女はポストカードの表面を見た。

そこには霧がかった青い髪の女性が写っていて、白いキャミソールに革ジャンを羽織り、横向きでカメラを見つめ、青い髪は全て耳の後ろに流していた。