267雪山を一緒に見に行きませんか?(2更)_3

田中局長は彼女を知っていた。望月綾瀬は当然、最近雲翔区のトップニュースを飾る政治家である田中局長のことをよく知っていた。

田中家が送り出した新星だ。

望月綾瀬はさておき、渡辺家と田中家だけでも、田中長邦に関する宴会に参加したがる人々が数え切れないほどいた。

望月綾瀬は富田区のような場所で田中局長に会うとは思わなかったので、彼女でさえも一瞬呆然として我に返った:「田中さん、お目にかかれて光栄です。」

二人はあまりにも形式的だった。

安藤宗次は手すりのところに立ったまま、目を伏せてハゼを見つめ、時折顔を向けて田中局長と話をしていた。

望月綾瀬は傍らに立ち、聞いて心が震えた。田中長邦の今の田中家での地位は田中北実と比べられるほどなのに、なぜ安藤宗次にこれほど敬意を示すのか?

特に……

安藤おじさんや安藤さんと呼ぶなんて?

望月綾瀬にも分かった。田中局長は心から安藤宗次を尊敬しているのだと。

望月家は没落し、今では田中家とは比べものにならない。安藤宗次はどうやって田中長邦と知り合い、相手がこれほど礼儀正しく接するのだろうか?

それに渡辺……

渡辺泉、雲翔区の新興勢力だ。

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研究院。

二階の会議室で、黄原院長は昨日の答案を白川華怜に渡した。「白川さん、なぜ博源塾の試験を受けたのですか。」

白川華怜は下を向いて見ると、そこには「100点」と採点されていた。

「あ、申し訳ありません」彼女は過ちを認めた。「次からはしません。」

黄原院長は何か言いたそうだったが、白川華怜の隣にいる、両手をポケットに入れ、冷たい表情の木村浩を見て、口に出かかった言葉を飲み込んだ。

福の神様は怒らせてはいけない。

さもないと、師匠に門前払いされてしまう。

妹弟子にも文句は言えない。師匠の下では妹弟子の地位は間違いなく彼より上なのだから。

あれこれ考えた末、黄原院長はただ黙って白川華怜を新しく届いた量子磁力計を見に連れて行くしかなかった。

木村浩は今日自ら来ただけでなく、量子磁力計も持ってこさせた。科学研究所の研究室には明石真治は入れないので、彼は機器を科学研究所の門まで護送して止まった。

木村浩の元に戻り、封印された書類を木村浩に渡した。「MTR研究所のレポートです。」