明石真治は周囲を見渡し、二人の安全を確保していた。
「行きましょう」安藤宗次は飴細工を木村翼に渡し、彼の小さなバッグを持って、前の交差点で車に乗ることにした。
二人とも今日は白川華怜の公演を見に行くことになっていた。
この時間帯は道路が少し渋滞していたので、海山マンションには戻らず、直接江渡大学の大講堂へ向かうことにした。
宮山小町は今日の午後は授業がなく、水島亜美と一緒に、すでに江渡大学大講堂に到着していた。
安藤宗次と木村翼のために席を確保していた。
まだ5時前だったが、大講堂はすでに人で溢れていた。
宮山小町が確保したのは左側の席で、首にビデオカメラを下げていた彼女は、安藤宗次と木村翼を見つけると立ち上がって二人に手を振った。「おじいちゃん、ここよ!」
「ここは賑やかですね」水島亜美は江渡大学に来るのは珍しく、大講堂の外に掛かっている「江渡大学金融学部」「江渡大学物理学部」の赤い横断幕を見て、自然と壮大な感覚と誇りを感じた。