263 百兵の王、故人の帰還のごとく!(2更)

青葉紗矢はすぐには反応できなかった。

黄原院長は慣れた様子で、目の前の女子学生に優しく促した。「時間ですよ?」

そう、時間だった!

青葉紗矢は冷たい視線に耐えながら、意を決して木村浩の手から白い紙袋を受け取った。礼儀も忘れずに、黄原院長にお辞儀をして、「黄原院長、失礼いたします」と言った。

彼女は紙袋を持って楽屋へ向かった。

黄原院長はようやく振り向いて、木村浩に向かって「木村坊ちゃま、前の方へ参りましょうか?」と声をかけた。

木村浩は後ろの暖簾に視線を留めたまましばらくの間、黄原院長についてだるそうに大講堂へ向かった。

この時間、大講堂の外では学生会のメンバーがすでに扉を閉め、観客の入場を制限していた。金融学部の宣伝が過剰だったうえ、白川華怜は江渡大学で人気者だったため、大講堂はすでに満員だった。

黄原院長が入ると、扉は完全に閉められた。外にはまだ多くの人々が携帯電話を掲げて撮影を続けていた。

メインライトはすでに消され、舞台の雰囲気照明だけが残っていた。最前列は真ん中の二席だけが空いていた。

藤井院長は早くから席に着いており、黄原院長が入ってくるのを見て、その後ろに背の高い男性が続いているのを見つけると、すぐに立ち上がって出迎えた。

「黄原院長」と小声で挨拶し、後ろの木村浩に視線を向けて「木村坊ちゃま」と声をかけた。

木村錦は、江渡大学経済学部出身の金融界の逸材で、興新の執行役員だった。

しかし誰もが知っていた、木村錦の背後に誰がいるのかを。

藤井院長が商工会議所の会長という地位に就けたのも、この教え子のおかげだった。

「藤井院長」木村浩は彼に向かってだるそうに頷き、藤井院長の隣の空席に優雅に腰を下ろした。その整った眉目を少し伏せ、孤高で冷淡な様子だった。

誰とも言葉を交わさなかった。

黄原院長は木村浩のもう一方の隣に座った。

藤井院長は二人が座ってから、ゆっくりと腰を下ろした。椅子に完全には腰掛けていない様子で、緊張が見て取れた。

前の二列の席は彼を中心に静かになり、会話の声も大幅に小さくなった。

この光景を後ろの列の学生会のメンバーたちも目にしていた。藤井院長の現在の金融学部での地位を考えると、立ち上がって出迎え、二人の院長が彼の隣にしか座らないというのは、一体この人物は誰なのか?