青葉紗矢はすぐには反応できなかった。
黄原院長は慣れた様子で、目の前の女子学生に優しく促した。「時間ですよ?」
そう、時間だった!
青葉紗矢は冷たい視線に耐えながら、意を決して木村浩の手から白い紙袋を受け取った。礼儀も忘れずに、黄原院長にお辞儀をして、「黄原院長、失礼いたします」と言った。
彼女は紙袋を持って楽屋へ向かった。
黄原院長はようやく振り向いて、木村浩に向かって「木村坊ちゃま、前の方へ参りましょうか?」と声をかけた。
木村浩は後ろの暖簾に視線を留めたまましばらくの間、黄原院長についてだるそうに大講堂へ向かった。
この時間、大講堂の外では学生会のメンバーがすでに扉を閉め、観客の入場を制限していた。金融学部の宣伝が過剰だったうえ、白川華怜は江渡大学で人気者だったため、大講堂はすでに満員だった。