「草山教授が音楽交流会に連れて行くの?」草山教授がこれほど白井沙耶香を重視しているのは、松木奥様も予想できていた。結局、白川家と松木家は草山教授に多額の投資をしているのだから。
「日曜日よ。藤野院長と江渡音楽大学の校長も来るわ」白井沙耶香はお茶を置いて、「おばさまも一緒にいかがですか?」
このような大規模な音楽交流会は、業界内の人々が集まる場所で、松木奥様も当然見逃すわけにはいかなかった。
二人の会話が終わる頃、松木皆斗も森中社長とプライベートファンドの件について話を終えた。
松木皆斗と白井沙耶香が階段を上がると、森中社長は松木奥様の方を向き、音楽交流会の話を聞いて、思わず口を開いた。「藤野院長とは連絡を取っていないのですか?プライベートファンドは田中家と関係があるそうですが、彼は内情を知っているはずです。」
「いいえ」松木奥様は首を振った。「もういいわ。藤野院長は...そう簡単に近づける人ではないから。」
彼女は江渡に長く滞在して、この地域の状況をよく理解していた。
「そうですね」森中社長は頷いた。
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日曜日。
江渡大規模音楽交流会。医学サミットはあと二日で終わるが、この音楽交流会と重なり、この一ヶ月の江渡は本当に賑やかだった。
午後六時半。
間宮さんの車が江渡音楽交流会の会場に停まった。
白川華怜は車を降り、スマートフォンと間宮さんから渡された招待状を持って中に入った。順子さんからの電話を受けていた。順子さんは彼女の予定を尋ねていた。梅田行長がちょうどこの時期に江渡にいて、民安秋山と一緒に彼女を食事に誘いたいとのことだった。
白川華怜はゆっくりと招待状を入口の受付嬢に渡し、その後ろについて大門に向かいながら、「授業が忙しいので、夜になれば時間があるかもしれません」と答えた。
ちょうどその時、一人の女性が門の中から出てきた。白川華怜は少し横に寄って道を譲った。
相手の視線が彼女に注がれた。
白川華怜は少し顔を上げた。黒地に金の花柄のチャイナドレスを着た女性で、優雅な眉目と立ち振る舞いが印象的だった。
白川華怜の視線に気づいた女性は、軽く微笑んで会釈した。
白川華怜も軽く頷き返し、すれ違った。