270木村家唯一の支配者、藤野院長の招待_2

前回彼が話したように、彼には親族が一人しかいない。それは叔母だった。

白川華怜は「うん」と返事をして、彼の続きの言葉を待っていたが、木村浩はそれ以上何も言わず、ただ白川華怜に「ただ君に伝えておくだけで、他の人はどうでもいい」という結論を告げた。

木村坊ちゃま、木村家の唯一無二の支配者である彼は、これまで他人を気にかけたことはなく、こういった話題を出すのも話をそらすために過ぎなかった。

現在の二代目である木村錦でさえ、白川華怜本人に会ったことがないのだから。

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二人は海山マンションまで歩いて行った。

街灯は暗く、この時間は外に人も多かった。途中で何人かが白川華怜に気付いたが、彼女の隣にいる、見るだけでも勇気のいる男性の存在に気圧されて、声をかける勇気はなかった。

二人が303号室に戻ると、畑野景明と空沢康利はすでに先に戻っており、山田の答案を見ていた。

宮山小町は下の103号室にいた。

白川華怜が103号室に水島亜美が用意した魚のスープを取りに行くと、木村浩は書斎のドアを開け、白川華怜のパソコンを置き、さらに彼女の書類を印刷した。プリンターが動作している中、彼はドアの外を見て、突然不思議な穏やかな時間の流れを感じた。

103号室。

白川華怜が下りて行くと、藤野院長とランスと田中局長と安藤宗次が1階のロビーで麻雀をしていた。

渡辺泉と安藤秀秋がランスの後ろに立って、麻雀の指導をしていた。

この一群は皆タバコを吸っており、中庭のガラスドアは開いていたものの、タバコの匂いは依然として強かった。

水島亜美はスープを白川華怜に渡すと、すぐに上がるように促した。

藤野院長はタバコを置き、珍しくくつろいだ様子で、白川華怜を見て顔を上げ、「明後日の夜6時に、間宮さんに迎えに来てもらうよ」と言った。

音楽交流会のことを指していた。

白川華怜はすでにドアの前に立っており、これを聞いて、彼に「OK」のジェスチャーを送った。

渡辺泉に質問をしていた宮山小町は、白川華怜が戻ってきたのを見て、一緒に階段を上がった。

二人が上がってから、渡辺泉はようやく安藤秀秋と雑談する機会を得た。「聞いたんだけど、望月社長があなたと安藤蘭たちのために、望月家への帰族の儀式を手配するって?」