安藤秀秋は醤油を持って入ると、キッチンから田中局長の声が聞こえ、早く醤油を持ってくるように言われた。
ランスは中華料理に詳しくなく、すぐに藤野院長と安藤宗次の将棋を見に行った。
風雅な囲碁ではなく、五目並べだった。
この二人は実力が拮抗していて、五目並べは盤面の半分以上進んでも勝負がつかなかった。
須藤は藤野院長とランスを知らず、二人とも初対面だったが、キッチンで料理をしている田中局長の声は聞き分けられた。彼は緊張しながら入って来て、安藤宗次に挨拶をしてから出て行った。
外に向かう途中、入り口で木製のコートハンガーに二着のスーツジャケットが掛かっているのを見た。
その横には青いゲストパスがあった。
須藤はそっとドアを閉めながら、青いゲストパスの一番上の文字と紋章を見た——
「X4年度グローバル医学サミット」
ドアが閉まり、須藤は外に立ったまま、ふと気づいた。
これは最近江渡で話題になっている医学サミットではないか?
今年のサミットは江渡で開催されるため、国慶節以来、江渡には大勢の来訪者が集まっていた。医学サミットには多くの著名人が集まり、患者の家族もこの機会に予約を取ろうとしていた。
安藤家と望月家には医療関係者がいないのに、少し不思議だった。
外に向かって歩いていると、5号棟の玄関を出たところで、渡辺泉が二つの酒瓶を持って来るのを見かけた。高級クラブで好まれるウイスキーではなく、赤い布で封をした古酒だった。
須藤は今年の雲翔区の新興実業家である渡辺泉のことを知っていた。道を譲りながら、「渡辺社長」と声をかけた。
渡辺泉は私募ファンドを運営しており、望月綾瀬も8000万を出資して参加していた。多くはないが、望月綾瀬の立場を示すものだった。渡辺泉はもともとホテルや飲食業を営んでおり、今回の私募ファンドは、本人が田中局長と親しいとはいえ、内部でも多くの人が懐疑的だった。望月綾瀬は現在最大の投資家だった。
ファンド名も面白く、ぶどうちゃんと名付けられていた。
上場したばかりの小規模なファンド株だった。
渡辺泉は優しく須藤に挨拶を返した。
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江渡大学。
今日も二週間に一度の文献報告会だった。