近藤希美は自分の椅子に座り直すと、彼女に注意を促した。「さっきランスさんからLINEの音声メッセージが来てたよ」
白川華怜は携帯を手に取り、バルコニーに出てランスに電話をかけ返した。
電話の向こうで、ランスは安藤宗次が作った紺色の外套を着たまま、応対する役人に頷きながら、相変わらずぎこちない中国語で話した。「ハイ、華怜、着いたよ。会いに行くね」
ランスは月半ばにサミットがあった。
「私は学校にいるわ」白川華怜はバルコニーに寄りかかりながら、ゆっくりと髪を拭いた。「おじいちゃんに会いに行くの?」
「イエス」
白川華怜は電話を切り、海山マンションの住所をランスに送信した。
少し考えてから、安藤宗次にもLINEを送り、ランスが夜に来ることを伝えた。
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金曜日。
江渡の高級住宅地にある墓地。