白川華怜は藤野信勝のアルバムを聴いたことがあり、『蒼山白雪』『平秋の音』『故郷の声』などを全て聴いていた。
それらは全て藤野信勝の中期の作品で、リズムはシンプルで安定感があり、温かみがあった。
そのため、藤野信勝が『白衣行』の演奏で有名になったことを知り、最後に作曲した曲が御琴堂のように素朴なものだったことに、白川華怜は少し驚いていた。
『木の花』のスタイルは緊張感があり、壮大で、脚本の中盤から後半にかけて、空城計のような緊迫感がある。
これは藤野信勝の得意とするスタイルではなく、今は確かに創作する気力もない。適任者が見つからなければ、すでに引退していただろう。
白川華怜はそう言ったが、高橋唯と渡辺執事は白川華怜の「藤野院長には無理です」という言葉に戸惑った。
しかしすぐに白川華怜の言葉の意味を理解した。