290 長槍が風浪を破り、筆を執りて鋒芒を試す_3

左右に白川華怜の姿が見えず、藤野院長も待ちきれなくなり、藤野悟志と一緒に平安区へ戻り、直接海山マンションで白川華怜を待つことにした。結局……

お箏、長槍、梁体字。

藤野院長は思い返した。

田中当主も待たずに。

二人は一緒に玄関を出た。

玄関の外。

藤野家の人々は昨日から藤野院長を見張っていたが、昨日藤野院長が来た時は、周りに警備員と記者が大勢いて、安全線の外で止められ、一日中藤野院長と話すことができなかった。

今日もまた早朝から見張りに来ていた。

遠くから藤野院長を見かけた藤野信幸は興奮して近づいてきた。

しかし、現場の警備員に止められた。「お年寄り、安全線を越えないでください。」

「あれは私の弟だ」藤野信幸は藤野信勝の方向を見つめながら、大きな声で言った。「信勝、信勝……」