290 長槍が風浪を破り、筆を執りて鋒芒を試す

書道協会の会長は、今回の女子学生が去年の書道賞の一等賞受賞者だと分かっていた。

去年の作品は書道協会に収蔵されなかったが、その字の骨力を今でも覚えていた。

わずか一年余りで、こんなにも。

今日この作品を見て、彼女の書道は再び衝撃を与えた。たった一年ちょっとで、その進歩は一朝一夕のものではなかった。

カメラは斎藤日奈を撮り忘れていた。

白川華怜と斎藤日奈が降壇するまで、カメラはようやく斎藤日奈を一瞬だけ映した。

しかしこの時点でカメラは意味をなさなかった。カメラの内外の注目は全て白川華怜に集中していた。

彼女と同じ舞台に立った斎藤日奈に注目する者はいなかった。

最前列。

田中当主は長衣を着て、ずっと女子学生の方向を見つめていた。二人が降壇するのを見て、ようやく我に返り、「はっ」と立ち上がった。