296楽勝、木村錦_3

陽城市。

草刈主任は電話を切ると、医務科へ行って診療記録を確認した。

渡辺泉の症状は珍しいものではなかった。以前の症例も病院の典型的なケースで、入院歴があったため、電子カルテもまだ保存されており、草刈先生は去年も復習していたので、ある程度記憶していた。

白川華怜が到着するとすぐに、草刈主任は患者の資料と症状を彼女に送信した。

黒い車がCRFSビルの前に停まった。

白川華怜のアプリコット色の刺繍入り靴が、薄い雪の上に降り立った。

白い指先で草刈先生から送られてきたメッセージを開くと、そこには一枚の画像があり、草刈先生が調べた患者の情報が記されていた——

【患者氏名:安藤智秋

……】

白川華怜は携帯をしまった。

**

木村浩はまだ地下実験室にいた。

気温が低かったため、コートを着て、その上に白衣を羽織っていた。白い指先で黒いペンを握り、何をするにも整然としていたが、時々スタッフに対して辛抱強さに欠けることがあった。