「綾音、どうしたの?」仁藤心春が近寄った。
「まさか、本当に弟さんと付き合うことになったの?やっと決心がついたのね!」山本綾音は仁藤心春に向かって言った。
仁藤心春は乾いた笑いを浮かべた。
「そうそう、お名前は?」山本綾音が尋ねた。
温井卿介は答えず、ただ横にいる仁藤心春の方を見つめた。
仁藤心春が紹介した。「彼は村上悠臣、卿介よ。こちらは私の友達の綾音」
「はじめまして、村上さん。私は山本綾音です。心春の大学時代の親友です!」山本綾音はにこやかに言った。「そうだ、二人とも起きたばかりで、まだ朝ご飯食べてないでしょう?ちょうど私、ちまきを持ってきたから、今から心春と一緒に温めて、朝ご飯にどう?」
そう言いながら、山本綾音は仁藤心春をキッチンに引っ張っていき、ちまきを温めながら言った。「昨夜、避妊はちゃんとした?卿介くんの遺伝子を持つ子供は絶対かわいいだろうけど、やっと再会したばかりなんだから、焦る必要はないわよ」
「ゴホッ、ゴホッ...」仁藤心春は唾を詰まらせそうになった。「昨日は何もなかったわ!ただ一緒に寝ただけ!」
「ゴホッ、ゴホッ...」今度は山本綾音が唾を詰まらせた。「うそでしょ?あんなイケメンが隣で寝てるのに、何もしなかったの?」
もし自分だったら、とっくに食べちゃってるのに。
仁藤心春は友人の視線を避けながら、心虚ろに「一緒に寝てるからって、何かしなきゃいけないわけじゃないでしょ」と言った。
昨夜はなかったけど、以前はあったんだよね、それも一度じゃなく!
「そうね、あんなイケメン、見てるだけでも癒されるもんね。彼、お仕事は何してるの?」山本綾音は興味深そうに尋ねた。
「雑用とか色々やってるみたい」仁藤心春は答えた。
具体的な仕事については、彼女は聞いたことがなく、卿介も自分から話したことはなかった。
「雑用?」山本綾音は自分の会社の用務員を思い浮かべた。あの雰囲気からすると、そんな感じには見えないけど。「あの体格と顔立ちなら、芸能人やモデルだってできそうなのに、雑用じゃもったいないわ。もっといい仕事を紹介しましょうか。どんな仕事がしたいの?」
「後で聞いてみるわ」仁藤心春は言った。