彼女の体が急に硬直した。
振り向くと、窓から差し込む月明かりで、温井卿介が今ベッドの端に座っているのが見えた。深い切れ長の瞳で、彼女を見つめていた。
「どうしてここにいるの?」と彼女は尋ねた。
ここは彼女の寝室で、今は真夜中だった。
「眠れなくて、お姉さんの様子を見に来たんだ。お姉さんも良く眠れていないようだね」と温井卿介は言った。
仁藤心春は起き上がり、部屋の明かりをつけた。「さっき夢を見て、目が覚めてしまったの」
「その『瑛真』についての夢?」彼は手を上げて、彼女の額の冷や汗を拭った。「お姉さんはどんな夢を見たの?夢の中で『瑛真、瑛真...』って呼んでいたよ。僕は嫉妬したよ。だって、僕こそがお姉さんの一番大切な人のはずでしょう?」
彼女が少し戸惑っていると、彼の声が続いた。「それで、瑛真って誰なの?」