仁藤心春が顔を上げると、若い女性が彼女の前に駆け寄り、叫んでいるのが見えた。
若い女性は濃いメイクをしており、全身ブランドのロゴ入りの服を着ていて、まるで自分がお金持ちだということを誰もが知るべきだと言わんばかりだった!
「あなた誰?」山本綾音は遠慮なく声を上げた。
「山田瑶音よ、山田流真の妹」と仁藤心春が答えた。
そして山田瑶音の隣には、年配の女性が立っていた。それは山田兄妹の母親だった。
さらに、島田書雅も彼らと一緒にいた。
仁藤心春は、こんな組み合わせを見ることになるとは思ってもみなかった。
「仁藤心春、あなたって恥知らずね。わざと野男に兄の手首を折らせたの?兄があなたと別れたからって?」山田瑶音は憤慨して言った。
山本綾音は驚いて、仁藤心春の方を向いて小声で尋ねた。「あなたの卿介さんがやったの?」
仁藤心春は首を振った。それをしたのは秋山瑛真だった。
誰がやったにせよ、山本綾音はとても気分がよかった。
山田流真のやつ、とっくに苦しむべきだったのだ。
仁藤心春が自分に反応せず、他人とひそひそ話をしているのを見て、山田瑶音はさらに怒った。「仁藤心春、あなたってどうしてそんなに意地悪なの?こんなひどいことをするなんて!」
「私はずっと前から、あの子が良い子じゃないって見抜いていたのよ!」山田お母さんも続けて言った。仁藤心春が無視するのを見て、思わず怒りを爆発させた。「ねえ、目上の人が話しかけているのに、そんなに礼儀知らずなの?やっぱり躾がなってないわね。うちの息子があなたを要らないって言ってよかったわ!」
仁藤心春は山田母娘を冷ややかな目で見つめた。「まず第一に、山田流真が浮気したから私が婚約解消を申し出たの。つまり、私の方が先に彼を要らないと言ったのよ。それに、私に礼儀があるかないか、躾がなってるかいないかは、あなたたちには関係ないでしょう。恥知らずで躾がなってないと言うなら、それはあなたたちの浮気した息子とこの島田書雅さんのことじゃないの?」
山田母娘は愕然とした。以前は彼らの前でいつも頭を低くしていた人が、こんな態度をとるとは全く予想していなかった!
「私にそんな口をきくなんて!」山田お母さんは怒鳴った。
「なぜ私がそんな口をきいちゃいけないの?」仁藤心春は冷笑した。