第36章 二股を掛ける女

しかし、仁藤心春は最後まで、その質問を口にすることはできなかった。

食事を終えた後、二人はレストランを出た。

レストランを出る時、心春は店長が汗を拭い続けているのを見た。そして、彼女がカードを出して支払いをする時、店員の目は落ち着かない様子で、会計の数字を打ち間違えそうにもなった。

支払いを済ませた後、店長は自ら彼らを玄関まで見送り、極めて丁重な態度だった。

このサービスは...ちょっと良すぎるんじゃない?

お昼にも来たけど、こんな感じじゃなかったのに。

「支払いの時、店長とスタッフの表情が少し変だと思わない?」と心春はぶつぶつと言った。

「そうかな?お姉さんの気のせいじゃないかな」と温井卿介は答えた。

その時、レストランでは、レジ係が店長に「店長、さっきの...あの方は温井二若様でしょう!」と言った。確かに、温井二若様は何度かレストランに来ていた。