第66章 利己的な人

凤のような瞳に驚きの色が閃き、すぐに彼女の方へ歩み寄った。「お姉さん、病院で会うとは思いませんでした。どうして病院に?体調でも悪いんですか?」

「い、いえ、九段階ワクチンの相談に来ただけです」彼女は適当な言い訳をした。

以前、会社で女性同僚たちが九段階ワクチンを打ちたがっているという話を聞いたことがあった。子宮頸がんの予防になるとかで、このワクチンは生産量が少ないため予約が必要で、しかも多くの人が一つの予約枠を争うため、なかなか予約が取れないのだという。

「お姉さんもこのワクチンを打ちたいんですか?」温井卿介が尋ねた。

「ただ...ちょっと相談してみただけです」彼女は作り笑いを浮かべた。

今の彼女の体調では、ワクチンを打つことなどできない。まして一年も満たない時間で、予防する必要など全くなかった。