第97章 久しぶり

「何を言ってるの?」温井朝岚は顔を上げ、妹をじっと見つめた。

「あなたの絵に描かれていた女性を見つけたわ。彼女は仁藤心春の友達よ。これが彼女の名刺!」温井澄蓮は手にした名刺を温井朝岚の前に差し出した。

温井朝岚は差し出された名刺を呆然と見つめ、震える手を伸ばしてその名刺を受け取った。

名刺に記された山本綾音という三文字が、彼の目に飛び込んできた。

綾音……そうか……彼女の名前は山本綾音なのか。

そして彼は、今になってようやく彼女の名前を知ったのだ。

「ハハハ……ハハ……」温井朝岚の口から笑い声が漏れ、目は赤く、瞳には霞がかかっていた。

温井澄蓮は呆然とした。「お兄様……」

「見つけた!」温井朝岚は手の中の名刺を握りしめた。今度こそ、彼女を自分の世界から消させはしない!