見捨てられ、恨み?
そう考えると、山本綾音の背筋に冷や汗が流れ、彼女は急いで携帯を取り出した……
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「どうしてここに来たんだ?」病院の階段口で、温井卿介は冷たい目で秋山瑛真を見つめた。
「仁藤心春が病気で休んでいる。私は彼女の上司だから、当然気にかけるべきだろう」秋山瑛真は言った。「昨夜、市内のサーキット場が封鎖されて、今朝には完全に閉鎖されたそうだ。これは並大抵の力ではできないことだな」
「結局何が言いたいんだ?」温井卿介は目を細めて、秋山瑛真を見つめた。
「なぜ君が仁藤心春の側にいて、しかも身分を隠しているのか、とても気になるんだ」秋山瑛真は言った。「仁藤心春は君のことを村上悠臣としか知らない。塩浜市で名高い温井次男様だとは知らないんだからな」
「彼女に私が誰なのか告げるつもりか?」温井卿介は眉を上げて尋ねた。