仁藤心春は突然うつむき、目に浮かぶ涙を隠した。
「ありがとう」彼女は少し鼻をすすり、普段と変わらない声を装って言った。「でも、私はあなたの時間を無駄にしたくないの。私たちは同僚で、友達でいられるけど…恋人にはなれないわ」
彼女にはもう時間が残されていないのだから!
「そう…なんですか?」彼の声には戸惑いと苦さが混じっていた。「じゃあ、心春さんが新しい彼氏を見つけて、誰かと家庭を築くまで、僕は同僚と友人としてだけ接して、もう追い求める人ではなくなります」
「あなたは―」仁藤心春は急に顔を上げ、相手を睨みつけた。「どうして私みたいな人に時間を無駄にするの?私のどこがいいっていうの?」
彼のような素晴らしい人に、結果のない恋に時間を費やしてほしくなかった。
「あなたはとても素敵な人です。少なくとも私にはそう思えます。あなたに時間を費やすのは無駄だとは思いません」黒川瞬也は言った。