彼はもう何も言わずに、オフィスを出て行った。
島田書雅は不満げに呟いた。「流真、あなたは大和田浩翔に優しすぎるわ。他の会社だったら、どの社員が社長にそんな口を利けるっていうの?私が思うに、同級生だったからって情けをかけるのはいいけど、でも中には同級生という立場を盾に、全く分別のない人もいるのよ」
山田流真は眉をひそめた。「心配するな。この件は分かっている。浩翔が友人だとしても、会社では、守るべき規律は守らせる!」
そろそろ、会社の人々に、規律というものを理解させる時だ!
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仁藤心春は山田流真の会社を出て、自分のマンションに戻ってきた時、意外にも自分のアパートの下に人影を見かけた。
心春の脳裏に、反射的に温井卿介の姿が浮かんだ。
しかし近づいてみると、そこに立っていたのは黒川瞬也だった。