第108章 自分の心を鬼にするために

仁藤心春が振り向くと、その声の主は山田瑶音だった。

そして山田瑶音の隣には島田書雅がいた。

山田瑶音は嘲笑うような表情で仁藤心春を見つめ、相手が今会社の入り口で困っている様子を見て、心の中で快感を覚えた。

「もうすぐGGKから追い出されるんでしょうね。お兄さんに会いに来たのは、許しを乞うためなの?それとも昔の情に縋るつもり?」山田瑶音は更に嘲笑って言った。「お兄さんの会社はあなたがいなくても大丈夫よ。書雅お姉さんは今たくさんの新製品を開発したわ。しかも、大手企業が全部その新製品を予約注文してるのよ。その注文数なんて、あなたには想像もできないでしょうね!」

仁藤心春は山田瑶音を完全に無視し、冷たい目で島田書雅を見つめた。「島田さんが製品開発までできるなんて知りませんでした。しかも一度にそんなに多くの新製品を。」

島田書雅は少し心虚になったが、すぐに微笑んで答えた。「私もただ運が良かっただけです。開発した新製品は、テストユーザーの評価も良好でしたから!」

「運が良かった?これらの新製品は、本当にあなたが開発したんですか?」仁藤心春は言った。

島田書雅が答える前に、山田瑶音が急いで口を挟んだ。「あなたが運良く開発できるなら、他の人だってできるでしょう?新製品の開発なんて大したことないわ。私だって今後たくさん開発できるかもしれないわよ!」

仁藤心春は冷笑した。素人はこんなに簡単に考えるのか、適当に新製品が開発できると思っているのか?

もしそんなに簡単なら、彼女の持つ特許権なんてとっくに価値がなくなっているはずだ!

「でもあなたって本当に厚かましいわね。お兄さんがここで待てって言ったから、本当にここで待ってるなんて!プライドのある人なら、とっくに帰ってるわよ。それともGGKでそんなに居心地が悪いの?だからお兄さんの力に頼ろうとしてるの?」

山田瑶音は仁藤心春を軽蔑的な目で見ながら言った。「でもね、お兄さんはあなたなんか見向きもしないわ。あなたみたいな女と、お兄さんが以前付き合ってたなんて、本当に何を考えていたのかしら。あなたみたいな……」

「心春!」また別の声が響き、山田瑶音の言葉を遮った。

大和田浩翔が急いで歩み寄り、仁藤心春に言った。「私のオフィスで座って待ちましょう。ここに立ってないで。」