秋山瑛真の車がゆっくりと走り去った。
仁藤心春はその場に立ち尽くし、心は荒涼としていた。
血液がんを患っていると知った時でさえ、彼女は本当の絶望がどういうものか分からなかった。でも今…全ての希望が一瞬で打ち砕かれる、そんな感覚を初めて理解した。
彼女は…悠仁を救うための時間をまた無駄にしてしまった!
本当は悠仁をしっかり守りたかった。少なくとも自分が生きている間は、悠仁を守れるはずだった。
でも今は、それすらもできないのか?
「大丈夫…ですか?」傍らの警備員は、仁藤心春の顔が青ざめ、今にも倒れそうな様子を見て、思わず尋ねた。
彼女は悲しげに微笑んだ。「大丈夫です」
振り返って、一歩一歩自分の停めてある車に向かって歩き始めた。どうすれば悠仁を救えるのだろう?
誰に頼めばいいの?