第135章 お姉さんが来たよ、怖がらないで

これは一体どういうことだ?この連中は何者だ?

「離せ、お前らは誰だ?離せ!」大和田剛志は暴れながら叫んだ。

「温井二若様が守ると言った人間だ。手を出してはいけない相手に手を出したからには、二若様にどう許しを請うか、よく考えたほうがいいぞ」相手は言った。

「何だと?」大和田剛志は驚愕の表情を浮かべた。

温井二若様が田中悠仁を守る?

もしかして、また田中悠仁の姉である仁藤心春の関係か?

でもあの女は既に二若様に振られたはずじゃないか?二若様が公衆の面前であの女に無理やり酒を飲ませたとも聞いたぞ!

大和田剛志の頭が混乱している時、女性の驚きの声が——「悠仁!」大和田剛志はビクッとし、目を見開いて、駆け込んできたその女性を信じられない思いで見つめた。

あれは……仁藤心春、田中悠仁の姉だ!

あのレース場で、この女が田中悠仁をずっと守っていた。もしあの時いなければ、とっくに田中悠仁を不具にしていたのに!

そして大和田剛志をさらに驚かせたのは……仁藤心春と一緒に入ってきたあの姿だった。

あれは……温井卿介、温井二若様だ!

大和田剛志は信じられない表情を浮かべた。二若様がなぜこの女と一緒に来たのか?これは一体どういうことだ?!

仁藤心春は田中悠仁の前まで駆け寄り、体中と顔中に傷を負った弟を心配そうに見つめた。「悠仁、お姉さんが来たわ。怖がらないで、お姉さんが来たの。今すぐ病院に連れて行くから、大丈夫よ!」

怖がるな?田中悠仁は不思議に思った。他人の声は既にほとんど聞こえなくなっていたのに、彼女の声だけは、こんなにもはっきりと聞こえる。

でも彼女は知っているのだろうか、彼は全く怖がってなどいないことを。

たとえ大和田剛志が本当に彼の命を奪おうとしても、彼は怖くなどない!

しかし彼女の声は、なぜか安心感を与えてくれた。

仁藤心春は温井卿介の方を向いて言った。「悠仁を運ぶのを手伝ってもらえる?病院に連れて行かなきゃ!」

温井卿介は側にいる部下に目配せをした。すぐに部下たちが田中悠仁の方へ歩み寄ったが、誰も予想していなかったことに、大和田剛志がこの時、彼を押さえつけていた者から振り解け、田中悠仁に向かって突進してきた!

もう自分は終わりだ。それなら、道連れくらいは作ってやる。全ては田中悠仁が悪いんだ!

絶対に田中悠仁を生かしては置けない!