仁藤心春の体は突然その場で硬直し、大きなベッドを茫然と見つめていた。
まさか……今夜、彼と彼女は……
彼女の考えを見透かしたかのように、彼は突然嘲笑うように言った。「私がそれほど女を必要としていると思うのか?望まない女に、私の生理的欲求を解消させるなんて?」
仁藤心春は一瞬固まった。そうだ、彼は温井卿介なのだ。どんな女でも手に入れられるはずなのに。
まさか彼が彼女の体をそれほど欲しがっていると思い込んでいたのだろうか?なんて自惚れていたのだろう。
仁藤心春は心の中で自嘲した。
「では、ベッドに入るというのは……」彼女は疑問に思いながら彼を見た。
「ただお姉さんと一緒に眠りたいだけだ。」温井卿介は言った。彼女を抱きしめて眠れば、もう薬を飲まなくても良いのか、眠れるようになるのかを知りたかった。
そう言いながら、彼は近くのクローゼットから自分のパジャマを一組取り出して彼女に投げた。「ここには私の服しかない。明日引っ越してくる時に、必要なものがあれば渡辺秘書に買わせる。明日は彼に付き添わせるつもりだ。」
「結構です。何も必要ありません。」仁藤心春は言い、服を持ってバスルームに向かおうとした。
「ここで着替えろ。」温井卿介が突然言った。
彼女は足を止め、振り返って彼を見た。
「ここで着替えろ。今や命さえも私のものなのに、体が私のものでないはずがないだろう?」彼は意味ありげに笑いながら言った。
彼女の顔は赤くなったり青ざめたりを繰り返し、喉には苦さが満ちていた。
そうだ、今となっては気にすることなど何もないのだ!
それに、彼女の体は既に彼に見られているのだから、気取る必要など何もない!
仁藤心春は深く息を吸い、シャツのボタンを外し始めた。
彼女が着ている服は、もともと温井家の邸宅で、彼の服に着替えたものだった。
しかし今は、元々きれいだった服に埃が付き、シャツの袖口には血が付着していた。
温井卿介はソファに座って見ていた。まるで何かを審査するように、あるいは目の前の光景を通して何か別のものを見ているかのように。
服を脱ぎ終わり、仁藤心春がパジャマに着替えようとした時、突然温井卿介が立ち上がり、彼女の前に来た。
両腕を広げ、突然彼女を抱きしめた。