第155章 写真撮影の日

週末は山本綾音と温井朝岚が写真集の撮影を約束した日だった。

場所もすでに決まっていて、温井朝岚の海辺の別荘に決定した。室内は別荘で撮影し、屋外のシーンは海辺で撮影することができる。

そして、休憩したい時は別荘内でいつでも休めるのだ!

うーん……理想的!

一日で終わるはずだわ!山本綾音は作業量を見積もりながら、心の中で考えていた。

しかし、温井朝岚は彼女にアシスタントを連れてきてほしくないと言い、一人で撮影してほしいと望んでいたため、山本綾音は自分の作業量が増えることを予想していた。

朝早く、彼女は起きて身支度を整えた。

山本お母さんが見かけて、「今日はどうしてそんなに早起きなの?」

「仕事があるの。今日は夜遅くなるかもしれないから、待たなくていいわ」と山本綾音は言った。まだ何時まで撮影するか分からなかった。

「そういえば、この前話してたわね。道中気をつけてね。夜には電話して、だいたい何時に帰れるか教えてね」と山本お母さんは言った。

母親として、娘のことが心配で仕方がない。たとえ娘が28歳になっていても。

「分かったわ」と山本綾音は答えた。

「じゃあ朝ご飯は……」

「下で卵焼きを買ってくるわ!」と山本綾音は言った。

服を着替えて、バッグを背負い、前回のように卵焼きと豆乳を買って、川辺まで歩いた。まるで泥棒のように、あたりを見回してから、温井朝岚の車に乗り込んだ。

「はい、あなたの分の卵焼きと豆乳」山本綾音は温井朝岚に彼の分を渡した。

「ありがとう」と彼は言った。

「じゃあ、まず食べてから、私のスタジオに行って今日の撮影に必要な機材を取って、それからあなたの別荘に行きましょう!」と山本綾音は言った。

「いいよ」温井朝岚は応じて、卵焼きを食べ始めた。

山本綾音は卵焼きを食べる温井朝岚を見つめていた。彼がこういった庶民的な屋台の食べ物を食べる姿を見るたびに、なんだか新鮮な感じがした。

「どうしたの?そんなに見つめて」と温井朝岚は言った。

「あなたが卵焼きを食べているのを見ていると、まるで高貴な仙人を俗世に引きずり下ろしたような感じがするの」と山本綾音は言った。

温井朝岚はその言葉を聞いて、瞳が一瞬輝いた。「綾音、僕は決して高貴な仙人なんかじゃない。それに、ずっと俗世にいたんだよ」