温井朝岚が部屋を出るまで、仁藤心春はやっと大きく息を吐いた。
時として、穏やかで優雅な人ほど、残酷なものだ。
綾音がこのような人に関わってしまって、どうなることやら。
そう考えると、彼女は自嘲的に笑った。自分も同じように温井卿介に関わってしまったではないか?
でも……もしあの時、温井卿介が手を差し伸べてくれなかったら、悠仁は本当に大変なことになっていただろう。だから今でも、温井卿介とあのような取引をしたことを後悔していない。
親友がまだ酔いつぶれているのを見て、仁藤心春は相手の上着を脱がせ、山本綾音が楽に眠れるようにしてから、洗面所に行って身支度を整えた。
時計を見ると、もうかなり遅かったので、綾音の両親にメッセージを送り、綾音が酔っ払ってしまったため、自分の家に泊まることを伝えた。