第162章 仁藤心春、邪魔するな

「私の人のことを心配して、何か問題でもあるのか?」温井卿介は温井朝岚をまっすぐ見つめた。

二人の男が対峙し、空気には一触即発の緊張感が漂っていた。

そのとき、山本綾音の声が突然響いた。「心春、私が今あなたと一緒にいることを、両親に伝えてくれない?」

夜に家に電話して報告したとき、心春と一緒にいて遅くなると言ったら、両親がどうしても心春の声を聞きたがったのだ。

お願いだから、自分の娘をそんなに信用できないの?

愚痴はさておき、山本綾音はすぐに携帯電話を親友に差し出した。

仁藤心春は携帯電話を受け取り、電話の向こうに向かって「仁藤心春です」と言った。

「心春か、うちの綾音が今日君と一緒にいるのかい?」電話の向こうから山本お父さんの声が聞こえた。

「はい、今日綾音が海辺で撮影の仕事をしているとき、ちょうど私が友達と海辺に遊びに来ていて出会いました。今みんなで焼き肉を食べていて、後で私が送っていきます」と仁藤心春は答えた。