第161章 温井朝岚の冷たさ

彼女に守られる感じか?仁藤心春は苦笑いを浮かべながら、温井卿介の目を見つめた。

「いいわ」と彼女は答えた。

「じゃあ、期限はお姉さんが死ぬまでだ。死ぬまで、僕を守り続けてくれ」と彼は続けた。

仁藤心春の心が一瞬刺されたように痛んだ。

また死ぬまでか?

でも彼女の命は、一年も残されていないのに。

唇を上げ、彼女は軽く微笑んだ。「いいわ、その時までね」

「じゃあお姉さん、指切りしよう」彼は右手の小指を彼女に差し出した。

仁藤心春は彼の手をじっと見つめた。「指切りげんまんしても、約束を守る気がない人がいれば、その約束は風に消えていくようなものよ」

「その通りだけど、僕はやっぱりお姉さんと指切りがしたいんだ。だって、これはお姉さんが教えてくれたことだから」温井卿介は笑いながら小指で仁藤心春の小指を絡め、お互いの親指を重ねた。「それに、これは単なる約束だよ。お姉さん、忘れないでね。今はあなたの命さえも僕のものなんだから」

その言葉は、まるで彼らの取引を思い出させるかのように、彼女が忘れることを恐れているかのようだった。

仁藤心春は絡み合う彼らの手を見つめた。「そうね、私の命さえもあなたのものだもの」

だからただもう一つの約束を加えるだけ!

彼を守るという約束を。

仁藤心春と温井卿介が三階から降りてきた時、山本綾音と温井朝岚はすでに別荘の庭でバーベキューの準備を始めていた。

仁藤心春は驚いた。「夜はバーベキューなの?」

「あ、言うの忘れてた」山本綾音は急に思い出したように言った。「今日は私と朝岚がもともとバーベキューをする予定だったの。でも食材たくさん買ってきたから、四人で食べても問題ないわ。夜バーベキューでも構わない?」

「構わないわ」仁藤心春は言い、温井卿介の方を見た。

「僕も特に意見はないよ」温井卿介は言った。

「よかった」山本綾音は温井朝岚の手伝いを続けた。

仁藤心春は一緒に忙しく動き回る温井朝岚と綾音を見ていた。綾音の前では、温井朝岚はまるで威厳など全くないようで、時には綾音が温井朝岚に指示を出しているほどだった。

この塩浜市で、温井家の長男に指図できる人は、おそらく指で数えられるほどしかいないだろう。綾音は自分でもまだ気づいていないのかもしれない。