山本綾音は自分の心臓が突然掴まれたような感覚に襲われた。
彼がそんな言葉を言うのが嫌だった。その言葉の中にある卑屈さがもっと嫌だった。
「そんなこと言わないでください。障害者に心を動かされないなんて、ただ足が不自由なだけで、障害者なんかじゃありません。それに、学歴も良くて、見た目も良くて、才能もあって、絵も上手だし、ピアノも弾けるし、ビジネスの手腕も凄いじゃないですか。そんなあなたに、誰が心を動かされないわけがありますか?」山本綾音は急いで言った。まるで温井朝岚がこのまま卑屈になってしまうのを恐れているかのように。
温井朝岚は山本綾音をじっと見つめた。「本当に僕のことを良いと思う?」
「もちろんです!」彼女は確信を持って答えた。
「じゃあ、もし僕が君を誘惑したら、心を動かされる?」彼は言った。
山本綾音は言葉に詰まった。突然、自分で自分の首を絞めるような発言をしてしまったと気づいた。
温井朝岚は本当に彼女を誘惑するつもりなのだろうか!この推測が彼女の頭をよぎったが、すぐに否定した。
ああ、何を考えているんだろう!
自分が何様だと思っているんだろう。温井朝岚が彼女を誘惑するわけがない!
「どう?」彼は長い眉を少し上げ、まだ彼女の答えを待っていた。
「はい、もちろんです!」彼女は取り繕うように言った。
温井朝岚は目の前の人を優しく見つめ、唇の端に優しい笑みを浮かべた。「綾音、ありがとう。」
「何のお礼なんですか?」彼女は不思議そうな顔をした。
「今日、浜辺で僕のために怒ってくれたこと、そして今言ってくれた言葉、僕の足が不自由だからといって軽蔑しないでいてくれることに感謝しているんだ。」彼は言った。
だからこそ、彼は彼女のことを手放せなくなっていくのだった。
山本綾音は軽く唇を噛んで、突然真剣な表情で言った。「朝岚さん、あなたは私の知っている人の中で一番優秀な人です。だから、こんなことで私にお礼を言う必要はありません。そもそもあなたが軽蔑されるべき理由なんてないんですから!」
彼女の率直な言葉は、暖かい流れとなって彼の心に染み込んでいった。
こんな彼女を、どうして手放せるというのだろう?!
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仁藤心春が三階に着くと、温井朝岚が言っていた三階のベランダがすぐに分かった!