神谷妍音が振り向くと、頼りにならない娘が悠々と階段を降りてくるのが目に入った。
娘を見るたびに、神谷妍音は心の中で嘆かずにはいられなかった。娘に艶やかな容姿と均整の取れた体型を与えたのに、役立つ頭脳だけは与えられなかったのだ。
競争心が全くなく、男性関係でも何度も失敗を重ねて、全く母親である自分に似ていない!
「お兄さんのせいよ。まさか山本綾音なんかを好きになるなんて!」神谷妍音は不機嫌そうに言った。
温井澄蓮はその言葉を聞いても少しも驚かなかった。「お兄様が直接おっしゃったの?」
「ええ、直接言ったのよ。しかも山本綾音の前で!」そのことを思い出すと、神谷妍音はさらに腹が立った!
「わぁ!」温井澄蓮は途端に八卦の心に火がついた。「じゃあ、山本綾音はどう反応したの?」