第176章 一緒に警察署へ

仁藤心春は馬鹿ではないので、相手が意図的にトラブルを起こしているのが分かっていた。

「ショッピングモールの監視カメラを確認すれば、綾音があなたの指輪を盗んでいないことが分かるはずです!」と仁藤心春は言った。

「このショッピングモールは温井家の所有物よ。監視カメラはちょうど故障していたの」と神谷妍音は無関心そうに言った。

そしてショッピングモールの幹部たちが前に出てきて、その中の一人がすでに警察に通報していた。

「温井夫人、警察がすぐに到着します」

同時に、警備員たちに仁藤心春と山本綾音を取り囲ませ、まるで彼女たちが逃げ出すことを恐れているかのようだった。

仁藤心春は目の前の荒唐無稽な光景を見つめていた。明らかにみんなこの温井夫人が嘘をついていることを知っていながら、ただ綾音を困らせるためだけに。

しかし、全員がこの茶番劇に加担していた。

仁藤心春は山本綾音に向かって「心配しないで、警察が来たら、あなたの身体を調べて相手の失くした指輪がないことが分かれば、きっと大丈夫よ」と言った。

「うん」山本綾音は返事をしたが、心の中ではこの件がそう簡単には済まないだろうと分かっていた。

結局のところ、この温井夫人は今、彼女に目に物を見せてやろうとしているのだから、できるだけ彼女を苦しめたいに違いない!

すぐに警察が到着し、双方とも警察署に連行された。

温井夫人は警察署でお茶を飲みながら、ショッピングモールの幹部たちは彼女の証人となり、口を揃えて山本綾音を告発し、中には温井夫人の機嫌を取るために、山本綾音が指輪を盗むところを見たと臨場感たっぷりに証言する者までいた。

警察側は女性警官に山本綾音の身体検査をさせたが、当然何も見つからなかった。しかし証人がいることと、温井夫人が紛失したという指輪が高額であることから、簡単には釈放できず、「容疑者」として警察署に一時拘留することになった。

「保釈はできないのですか?」と仁藤心春は尋ねた。

「それが...指輪の価値が高額なため、保釈金額は数千万円になるかと」と警察は答えた。

仁藤心春は一瞬固まった。この事態は彼女の想像以上に厄介なものだった!

「大丈夫よ、私はしばらく警察署にいるから。両親には出張だと言っておいて、後でフォローしてくれればいいわ」と山本綾音は仁藤心春に言った。