第201章 かつての隣人

仁藤心春は気まずい思いをしたが、長谷健軍は、仁藤心春が相手を「卿介」と呼ぶのを聞いて、何かを思い出したかのように温井卿介に向かって言った。「覚えてるよ、君は卿介だよね。小さい頃、心春お姉さんが僕にお菓子をくれた時、いつも奪い取っていたよね!」

温井卿介は長い眉を少し上げて、「君も覚えているんだね。珍しいな、君は僕より二歳下だろう」

長谷健軍は笑って、「でも断片的な記憶しかないよ。むしろ後になって、心春お姉さんのもう一人の弟の方が印象深かったな。心春お姉さんとお母さんが出て行った後、あの父子はかなり悲惨だったよ。今はどうしているんだろう」

仁藤心春は、健太が秋山家の父子のことを言っているのを知っていた。

以前レストランで健太と家族に会った時、仁藤心春は挨拶を交わしたが、その時、健太と家族は普通に接してくれた。