秋山瑛真は足元に落ちた携帯電話を見下ろした。
「秋...秋山会長」先ほどまで集まってビデオを見ていた社員たちは、身体を硬直させながら言った。携帯を落とした社員は前に進み出て、落とした自分の携帯を拾おうとした。
「待って!」秋山瑛真が突然叫んだ。
その社員は手が震え、秋山瑛真が自ら身を屈めて携帯を拾うのを見ていた。
しかし秋山瑛真は携帯を拾った後、すぐには相手に返さず、画面を見つめていた。
動画はループ再生されていたため、すぐに再び再生が始まった。動画は仁藤心春と温井卿介のKISS CAMの様子で、実際にはこの動画は30秒ほどのものだった!
しかし、この30秒の内容を秋山瑛真は数分間もじっと見続け、彼の表情は徐々に暗くなっていった。
自分たちのボスの暗い表情を見て、数人の社員は恐れおののいていた。そして携帯の持ち主である社員は、今になって後悔で胸が張り裂けそうだった。
動画を見つけただけならまだしも、なぜ同僚たちと共有して、一緒に見たりしたのか。そして秋山会長に見つかってしまうなんて!
今、秋山会長があんな暗い表情で自分の携帯を持っているのを見て、次の瞬間、携帯が粉々に握りつぶされてしまうのではないかと心配になった!
「仁藤部長ったら、会社がこんなに忙しいのに病欠を取って、本当に病気だと思っていたのに、まさか人と遊びに行っていたなんて」坂下倩乃の声が突然響いた。
坂下倩乃がこのように直接、仁藤心春の休暇が口実に過ぎず、デートが本当の理由だと示唆し、仁藤心春が仕事に責任を持っていないと暗に非難したのは、秋山瑛真の仁藤心春への不満を深めるためだった。
しかし予想外にも、秋山瑛真は冷たい視線を彼女に向け、その瞳の中の寒気に、坂下倩乃はすぐに口を閉ざし、それ以上何も言えなくなった。
秋山瑛真はようやく手にしていた携帯を傍らに立っていた社員に返し、そのまま執務室に入っていった。
他の社員たちは、やっとこの時になって長いため息をついた。
「まあ、さっきは本当に死ぬかと思った!」
「私なんて、その場で命を落とすかと思ったわ!」
「坂下秘書、さっきは本当に勇気があったわね。秋山会長の前であんなことを言えるなんて、私たちにはとてもそんな勇気ないわ!」ある人が言った。