第199章 キスカム

いわゆるKISS CAMは、試合の中断時間に観客との交流を図るものです。

人気抜群の「キスゲーム」なのです!

会場の大画面が観客席のファンに向けられると、通常隣り合って座っている二人がキスを交わします。カメラマンは通常男女のカップルを狙いますが、時には例外もあります。

毎回のKISS CAMの時間は、多くのファンから支持され、数々の名場面も生まれています!

大画面のカメラには、まず若いカップルが映し出され、二人は大胆にキスを交わし、観客席からは温かい笑い声と拍手が沸き起こりました。

続いて、カメラが切り替わると、中年のカップルが映し出されました。女性は少し恥ずかしそうでしたが、最終的には男性とキスを交わしました。

このように、カメラは次々と切り替わり、仁藤心春も興味深く大画面を見つめていました。

大学時代、山本綾音と一緒に試合を観戦した時にも、このKISS CAMの時間があり、その時は綾音に「もし一方がキスを拒否したらどうなるの?」と好奇心から尋ねたことがありました。

「拒否すればいいじゃない。強制じゃないし、ただの楽しみなんだから」と綾音は言いました。「でも、将来彼氏ができたら、一緒に野球を見に来て、大画面に映ったらキスして、人生の素敵な瞬間、いい思い出になるよね!」

今、大画面には白髪の老夫婦が映し出されていました。夫婦らしい二人でしたが、このような高齢者が野球観戦に来るのは珍しく、その白髪は群衆の中でも目立っていました。

二人は大画面に自分たちの姿が映し出されるのを見て、お互いに微笑み合い、観客の歓声の中でキスを交わしました。

仁藤心春は画面に映る老夫婦を見つめながら、これこそが歳月が与えてくれた最も優しい贈り物なのだろうと思いました。愛し合う夫婦が老いるまで共に歩める、そんな贈り物。

かつては自分も愛する人と共に老いることを夢見ていましたが、今は……

老夫婦のキスが終わると、画面は突然切り替わり、心春は目を見開きました。

なんと、画面には自分自身が映し出され、そして…隣に座る温井卿介の姿も!

なんという運命でしょう!

そして今、温井卿介も顔を上げて大画面を見つめていました。

周りの観客からは再び歓声が沸き起こり、その中には「かっこいい!あの人すごくかっこいい!」という女性ファンの声も混ざっていました。