第190章 もう心配させないで

仁藤心春は後になってようやく気づいた。鼻血が出ていたのだ!

先日も鼻血を出したばかりなのに、今日もまた出てしまった。しかも卿介の前で。

心春は急いで近くにあったティッシュを取り、頭を後ろに傾けながら、ティッシュで鼻を押さえて一時的に止血しようとした。

「どうして急に鼻血が?もしかして喧嘩で鼻を怪我したの?すぐ病院に連れて行くよ!」温井卿介は慌てて言った。

「大丈夫です、私...喧嘩で鼻は怪我してません。たぶん...この二日間火が上がってるから鼻血が出たんです。前にも火が上がって鼻血が出たことがあります」心春は急いで答えた。

もし本当に病院で検査を受けたら、彼女の病気は隠しきれないだろう。

もし彼が知ったら、悠仁に彼女との適合検査を強制するのだろうか?

この世界で、彼女に残された唯一の肉親は悠仁だけだった。

でも悠仁と彼女は実際には血のつながりが半分しかなく、適合する確率はもともと低い。さらに重要なのは...彼女と悠仁の関係では、悠仁は絶対に適合検査に応じないだろうということだ。

以前、試しに悠仁に聞いてみたが、すぐに断られてしまった!

彼女は悠仁を強制したくないし、自分や周りの人に希望を持たせたくもない。だから...何も言わずに、賭けの契約が終わったら、一人で海外に行って死を待つのが、彼女にとって最良の結末なのかもしれない!

「火が上がってる?前にも鼻血出たことあるの?」温井卿介は疑わしげに心春を見つめながら言った。

「はい」心春は答えた。「すぐ大丈夫になります。後で火を下げる食べ物を多めに食べればいいです」

幸い今回は、前回GGKビルで長時間かかった時と違って、比較的早く止血できた。心春はほっと胸をなでおろした。

「もう血は止まりました。顔を洗って、服を着替えてきます」心春は言った。先ほどの鼻血が服に落ちていたし、顔や手にもかなりの血が付いていて、今見ると少し恐ろしい光景だった。

心春は急いで部屋に戻った。

一方、温井卿介は自分の手をじっと見つめていた。指には彼女の鼻血が付着していた。

まるで目に見えない熱が、彼の手を焼き続けているかのようだった。

彼女の鼻から血が流れ出て、服に滴り落ちるのを見た瞬間、彼の頭は真っ白になり、心臓が止まりそうになった。

彼の手さえも、その瞬間震えていた。