第203章 彼女のために痛む

「何ですって?」仁藤心春は驚いて、しばらくしてから言った。「あの特許権は、どの会社にも譲渡するつもりはありません。それに今、研究開発部では、私が開発した新しい配合が、ほぼ完成していて、もう少しすれば、生産ラインに乗せられるはずです。」

「もし私がその配合をGGKに渡すように要求したら?」秋山瑛真は強く主張した。

仁藤心春は疑わしげに相手を見つめた。以前、秋山瑛真はこれらの盗用された配合に少しの興味も示さなかったのに、なぜ今になってこんなにも固執するのか?

「なぜですか?」彼女は尋ねた。

「川島企業は以前、利益率も悪くなかった。しかし今回の新製品のせいで、高額な違約金を支払わなければならなくなった。だが、もしこの特許権を川島企業に与えることができれば、それらの契約にはまだ余地がある。GGKは元々川島企業への投資を考えていた。今このような形で川島企業に資本参加し、安価で株式を取得できれば、GGKにとっては非常に良い取引となる」と秋山瑛真は説明した。

「GGKが川島企業に投資するんですか?」仁藤心春は驚いた。

「そういう予定だ」と秋山瑛真は答えた。

「もし私が特許権を渡したくないと言ったら?」仁藤心春は言った。

「君は今GGKの社員だということを忘れるな!」秋山瑛真は不機嫌そうに言った。

「私はGGKの社員ですが、私の全てをGGKに売り渡したわけではありません。この特許権は、GGKとは何の関係もないんです!」仁藤心春は一歩も引かずに言い返した。

「仁藤部長、そんな言い方はないでしょう?部長なら公私の区別くらいわかるはずですが、今の態度は明らかに山田流真を潰すために意図的に特許権を渡さないようにしているだけじゃないですか。以前は山田流真とお付き合いしていたのに、どうして少しの情けもないんですか?それとも、今は温井家の次男と付き合うようになったから、秋山会長のことも眼中にないということですか?」坂下倩乃は意地悪そうに言った。「昨日、温井卿介さんと野球観戦に行くために休暇を取ったことも、他の人が知らないとでも思っているんですか!」

仁藤心春は一瞬固まった。やっと秘書課を通った時に、あの人たちがなぜあんな目で見ていたのかわかった。