第215章 保護

仁藤心春は驚き、声のする方向を見ると、二人の女性が悠仁に向かって罵声を浴びせているのが見えた。

心春は急いで立ち上がり、田中悠仁の方へ足早に歩いていった。

田中悠仁は眉をひそめて不機嫌そうだった。この二人の女性のことは全く知らなかった。ただトイレを済ませて出てきた時、このテーブルの前を通りかかった時に、突然この二人に止められ、何かの広告に出ていたのかと聞かれ、一緒に写真を撮りたいとかサインが欲しいとか言われただけだった。

そんなことには当然相手にする気もなく、すぐに断った。

すると二人の女性はすぐに態度を豹変させ、罵声を浴びせ始めた。

こういう女性たちは本当に退屈だ。ただ彼の外見だけで写真やサインを求め、断られたからといってこんな風に罵る。彼女たちが本当に好きなのは、きっと精巧な人形のようなもので、彼女たちに逆らうことなく、言うことを何でも聞くようなものなのだろう。

二人の罵声を無視して、悠仁はその場を離れようとした。しかし一歩踏み出したところで、一人の女性が突然テーブルの上の飲み物を掴み、悠仁に向かって投げつけた。

女性の動きは予想外で、悠仁は避けようとしたが間に合わなかった。

その時、一つの影が彼の前に飛び出し、代わりに飲み物を浴びてしまった!

悠仁は驚き、突然目の前に現れた心春を呆然と見つめた。

オレンジ色の飲み物が、彼女の髪や頬を伝って流れ落ち、ひどい有様だった。

しかし彼の脳裏には、大和田剛志に誘拐された時、刃物が彼に向かって突き刺さってきた時も、彼女は同じように躊躇なく彼を守ろうとしたことが浮かんできた。

「あなた誰なの!」心春に飲み物をかけた女性は謝る様子もなく、むしろ心春が余計なことをしたことに不満そうだった。

「私は彼のお姉さんです」心春は答えた。

「お姉さんなら、弟さんにマナーというものを教えた方がいいわね。モデルをやってるんだから、サインと写真くらい応じてくれてもいいでしょう。偉そうにしてるけど、何様のつもり?」女性は憤慨して言った。

「なぜ私たちとサインや写真を撮らなければならないの?何の権利があるの?」心春は反論した。「人にマナーを求める前に、自分にマナーがあるべきじゃないの?今私に飲み物をかけたのに、まだ謝ってもいないでしょう!」