第216章 認められたお姉さん

仁藤心春は田中悠仁の視線の先を追って、その香り袋を見つけると、気まずそうに笑いながら前に出て香り袋を手に取った。「これは…あなたが要らないなら、私が…持って帰ります。」

「僕にくれたんじゃないの?」田中悠仁は彼女に向かって手のひらを上に向け、指を広げた。

仁藤心春は一瞬固まり、しばらくしてようやく理解したかのように、興奮気味に香り袋を彼の手のひらに置いた。

田中悠仁は香り袋を握りしめ、静かに目を伏せた。

期待しなければ、失望することもない。

でも…彼女にまた期待を抱きたい、そうしたら…また失望することになるのだろうか?

三人はレストランを出て、温井卿介は車で先に田中悠仁を田中家の方へ送った。

道中、仁藤心春は再び田中家からの催促の電話を受け、田中悠仁の住むマンションに着いた時には、田中佩子と彼女の娘の橋本春菜がすでにマンションの入り口で待っていた。

田中悠仁を見るなり、田中佩子はすぐに駆け寄り、とても心配そうな様子で、「悠仁、大丈夫?この生意気な女、何かしなかった?」

田中悠仁は冷ややかに答えた。「何ともないよ。」

田中佩子は仁藤心春に向かって怒りを爆発させた。「どうして勝手に悠仁を連れて行くの?私たちに一言も言わないなんて。忘れないでよ、私が悠仁の後見人なのよ。保護命令を申請して、あなたが二度と悠仁に近づけないようにできるのよ!」

仁藤心春は体が硬直し、「申し訳ありません。次からはこのようなことはしません。」

「次から?まだ悠仁に近づくつもりなの?悠仁の両親はどうして死んだと思ってるの?!あなたが殺したのよ。あなたは縁起の悪い女よ。悠仁まで殺すつもりなの?!」田中佩子は罵った。

「彼女は縁起の悪い女じゃない。」田中悠仁の声が突然響いた。

田中佩子は驚いた表情を浮かべた。「悠仁、あの女に騙されているの?あの女に何を言われたの?騙されちゃダメよ。」

「騙されているかどうかは僕の問題だ。もし彼女が縁起の悪い女なら、僕は縁起の悪い女の弟ということになる。これからあなたの家で何か起きたら、僕のせいにするの?僕が存在するからそうなったって言うの?」田中悠仁は冷たく言い放った。

田中佩子は言葉に詰まり、一時何も言えなくなった。