「綾音、そんなに私のことを心配してくれて嬉しいよ」と温井朝岚は言った。それは彼女の心の中に自分がいることを意味していたから。
山本綾音は思わず目を転がした。一瞬、何と言えばいいのか分からなくなった。
「大丈夫だよ。運転は肩の怪我に支障はないから」と温井朝岚は再び言った。
山本綾音はまだ不安そうで、「やっぱり私が運転した方がいいわ。あなたは助手席に座って」と言った。
「君が運転するの?」彼は驚いた様子だった。
「私だって運転できるわよ!仕事でもよく運転してるじゃない」と彼女は言った。しかも彼女の免許は中型免許だった。
温井朝岚はそれを聞いて微笑み、最終的には素直に助手席に座り、山本綾音を運転席に座らせた。
山本綾音は計器盤とハンドルをじっと見つめた。実は高級車を運転するのは初めてだった。
車を始動させながら、彼女は尋ねた。「ところで、この車いくらするの?」
「そんなに高くないよ」と彼は言ったが、次の言葉で彼女は思わず水を吹きそうになった。「5000万円くらいかな」
「げほっ...げほげほ...」山本綾音はアクセルを踏めなくなりそうだった。5000万円が高くない?じゃあ彼にとって高い車っていくらなんだろう?
彼女はゆっくりとアクセルを踏みながら、おずおずと聞いた。「この車、保険には入ってる?」
彼は思わず笑ってしまい、「どうしてそんなことを聞くの?」
「もし私が運転してて、どこかにぶつけちゃったらって...」だって5000万円の車だよ。ちょっとした傷の修理だって高額になるはず!
彼女の硬直した運転姿勢を見て、彼は言った。「保険には入ってるから、安心して運転して。この車が壊れても大したことじゃないよ」
「もう、そんな不吉なこと言わないで。私たち今は安全なんだから!」山本綾音は慌てて言った。
彼女のその様子が、彼にはますます愛らしく感じられた。
ようやく無事にショッピングモールの駐車場に着いた。二人が車を降りると、山本綾音は尋ねた。「どんな映画が好き?」
「なんでもいいよ」と彼は答えた。
「じゃあ、まず座る場所を見つけて、チケットを買いましょう」と彼女は言った。
「うん」と温井朝岚は応じた。
ショッピングモールには休憩できる場所がいくつかあり、買い物で疲れた人々が休めるようになっていた。